私たちのすぐそばにある異世界の扉。たとえその存在を知っていても鍵が無ければ開けることも出来ません。これはある鍵職人が創った、異世界へ繋がる鍵のおはなし・・・。
暗く冷たい極夜に抱かれて
淡く儚い光を探し求める。
それはきっと勇気を示してくれるだろう。
これはキャンディケインの森の鍵。
杖の先を信じよう。それはきっと救いを示してくれるだろう。
月の光も届かない暗闇の森。
外界から切り離されたそこは
人々に知られる事の無い禁断の地。
これは知恵の森の鍵。
その実に触れてはいけないよ。
どうかそのままの君でいて。
ようこそお越し下さいました。
体は綺麗に拭きましたか?
砂糖もベリーもたっぷり擦り込みましたか?
これは注文の多いスイーツ店の鍵。
さあさあ、早くお口にお入り下さい。
それではいただきまーす。
草木も眠る丑三つ時。
痺れる程の甘い誘惑に誘われて
鼓動が止むまで躍りましょう?
これは夢見の園の鍵。
舞い散る花弁が笑いかける。
「棺の中でまた会いましょう。」
陽光の差す一際輝くクレーター。
青い星を望む花は
憧れを映すように澄んでいる。
これはアリスタルコスの庭の鍵。
流星より芽吹いた命は
星のように月面で輝いている。
陽光の差す六角形のクレーター。
青い星を望む花は
憧れを映すように澄んでいる。
これはコペルニクスの庭の鍵。
流星より芽吹いた命は
星のように月面で輝いている。
ガラスの彫像がひっそりと客人を迎える。
ガラスドームで覆われた温室のその先に
イースターエッグはあるのだろうか。
これは光の庭園の鍵。
その箱庭は春陽を湛え、
小さな世界を優しく包み込む。
低木で彩られた巨大迷路。
おしゃべりな案内人の向かう先に
イースターエッグはあるのだろうか。
これは惑いの庭園の鍵。
その迷宮は春愁と共に現われ、
何事も無かったように消え去る。
渇望を映すデマントイド。
希望を宿すパイロープ。
勇気を与えるガーネット。
これは幸運を呼ぶ鍵。
君の行く先に、光があらん事を。
桜舞う並木道のその向こう。
跳びまわるラビットたちは
今日もせっせとエッグを隠している。
これはイースタータウンの鍵。
どこにあるかは内緒だよ。
さあ、エッグハントの始まりだ!
思い描いた世界では、君は何になれただろうか。
星の導きに従えば成すべき道が分かるだろう。
覚悟は出来ているか?己が愛を示せ。
これは眷属の鍵。
それは隷属では無い。
運命を賭けられるか?己が愛を示せ。
白波が巻き上げる太古の声。
海の底へ沈んだのは、
かつて栄えたアトランティス。
これは海境の鍵。
海神の声に耳を傾けよ。
さすれば道は開かれん。
真珠の首飾りを纏うグラス。
弾けるシャンパンゴールド。
溢れる想いは芳醇な香りと共に閉じ込めて。
これはワイナリーの鍵。
思い出を昇華して、聖夜へ祈りを捧げる。
ときめきは今も色褪せない。
全てを覆い隠してしまえそうな、真っ白な粉雪。
足を踏み入れれば消えてしまうその森へ入るには
青い鼻のトナカイを追わなければならない。
これは神秘の森の鍵。
行き場を失った者たちへ。
残された最後の楽園へようこそ。
いらっしゃいませ、手袋をお探しですか?
僕の祖父もその昔、人間から手袋を買ったそうです。
お気に召す物はありましたか?
これは狐の手袋屋の鍵。
熊の手袋からねずみの手袋まで揃えています。
お代は葉っぱでお願いしますね。
聖夜を前に降り注ぐ星は留まることを知らない。
星が数える程しか無くなった頃が彼らの出番だ。
これはトナカイ小屋の鍵。
ぴかぴか光る鼻へ敬意を称し、
大空へ飛び立つのだ。
星降る丘のその向こう。
目いっぱいのおめかしをして
未だ見ぬ友へ心躍らせるおもちゃたち。
これはおもちゃ工場の鍵。
着飾った僕らを見て、
君はどんな顔をしてくれるかな。
白く染まる星降る丘には
星を集めるスノーマンがいる。
彼の役目は一際輝く星を見つけること。
これは星集めの鞄の鍵。
今年の聖樹の上に輝くのは
一体どんな星なのだろうか。
濁った沼地のその向こう。
深紅の果実を手繰り寄せ、
アラクネは真偽を問う。
これは偽りの果樹園の鍵。
虚飾で着飾った熟れた果実の
中身を知る者はいない。
煌めく森の奥深く。
氷の華が一斉に咲き始めれば
華やかな舞踏会の開演だ。
これは白鳥の湖の鍵。
銀世界に舞う純白のドレスが
彩る木々を魅了する。
狂気の夜が白ける前に
ガルグイユの慟哭を
どうか並々と注いでおくれ。
これは主のいない城の鍵。
慟哭はやがて憤怒へと変わる。
度胸試しが出来ないのなら今夜は帰してあげないよ。
煌めくアートの街カラフルタウン。
色鮮やかなグミのアートは
女王様の目をいつも楽しませている。
これはおかしな街の門の鍵。
弾ける想いに促され、
迷い込んできたあなたはだあれ?
甘美なる誘惑の街ワンダーシティ。
女王様の庭園では今日も
コンフェイトクロッケーが行われている。
これは赤の庭園の鍵。
きらきら転がる金平糖へ憂いの目を向けながら
フラミンゴは今日も素知らぬ顔を続けている。
なんでもない歌を歌い、
答えの無い論争をして
ティーパーティは今日も賑やかだ。
これはなんでもない庭の鍵。
ポットに収まる眠り鼠は夢を見る。
明日もこんな日でありますように。
宝石採掘が盛んな街ジュエルボックス。
水晶で造られた街の壁面には
色とりどりの蛍石が埋め込まれている。
これは鉱石の街の鍵。
この地に眠る原石達は
どんな美しさを秘めているのだろうか。
残されたのは僅かな手がかり。
忘却の彼方へ消える前に、
どうか見つけ出してほしい。
これは秘鑰の鍵。
断絶されたこの世界で
色褪せぬよう、守っているから。
風に乗って流れる街アネモスヒル。
見た目よりもずっと軽いその丘は
上昇気流に乗って世界を渡り歩く。
これは風の街の鍵。
空に浮かぶ羨望の街は
今日はどこへ向かうのだろうか。
遥か下へ広がる雲海。
セパレートブルーの空を映す天の川。
そこは翼を持つ者が辿り着ける場所。
これは青の境界への入り口の鍵。
翼は風を纏い、ざわめく雲を散らす。
君の世界が光で溢れるように。
沈没した叡智の都市アルカナ。
エメラルドグリーンに揺らめく藻が
沈黙した廃墟を覆う。
これは水没都市の鍵。
回遊する暴れ馬に安寧を委ね、
永遠の知識は眠り続ける。
遮断機の残響。 手折られた餞。
逆さまの鴉が唄うのは
聴くに堪えない子守歌。
これは悪夢の世界の鍵。
歪められた扉は鍵《救い》を求める。
悪魔に魅入られる前に、帰って来て。
浮上する意識。 鮮やかな記憶。
夜明けと共に見た夢は、
悲しい位に眩しかった。
これは制約の鍵。
天馬は再び空を舞う。
鉛の枷は、もう必要無い。
晦の夜に輝く一等星の灯火。
憂いを払う淡き光は
いつも足元を照らしている。
これは標の鍵。
気が付けば無数の星が
未来を照らしているだろう。
枯れた大木のその向こう。
タソガレコウモリと口づけを交わして
不朽の花園は歌いだす。
これは歪な花園の鍵。
不協和音を響かせて
口が裂けるまで歌い明かそう!
意志ある者よ。
終焉へ向かう歯車は回り始めた。
狂った時間を巻き戻し
壊れた秩序へ光を照らせ。
これは時渡りの鍵。
運命の歯車はただ、回り続ける。
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